ベージュ色のマニキュアなんて塗っているんだかいないんだから分からないから意味ないじゃない。
ベージュ色のスカートやコート、ましてやパンプスなんて見えないから意味ないじゃない。
本当にそう思っていました。
友達に「このバッグ、ベージュか黒か迷ってるんだ〜」なんて相談された日にはベージュを選択肢に入れ迷う意味が分からなかったのでした。
本当に意味が分からなかったのでした。
ところが。
いつだか、素爪ではなんだな、と言う席があり、ものぐさに「まあ楽そうだ。」と言う理由からベージュ色のネイルを塗ってみたらアラまあ素敵!
押しも引きもせぬ奥ゆかしさと存在感の見事な同居。
光の下では照りと輝き、肌に馴染む馴染む。馴染むにもほどがある。
それから私の視界にベージュが飛び込んで来て世界が楽しくなりました。
いつかの人種問題に取り組む団体の文章で
「世界には色々な肌色があると言うのに、漫然と『肌色』とした表記でベージュ色を持ち出すのは是いかに。」というような記事を見た事がありました。
私の肌は元々黄色っぽく浅黒く、外国へ行って様々な人に会うとブラックともゴールドとも言える様なえもいわれぬ輝く肌色を持つ子や、日本でも桃色のような肌を持つ色白ちゃんをたまに羨ましいと思うことがあった程度で、さして気にもしていなかったのです。
先日ようやく手に入れたChristian Louboutinの「NUDE・ヌード」というコレクション。
上記の人種問題に先駆けてルブタン社が「どの肌色にもヌードのようなパンプスを。」というコンセプトで無数に作られたそれぞれの「肌色」の素敵なパンプス。
私の手に入れたヌードは、やや黄味がかった落ち着いたベージュのパンプスでした。
それは、まるで脚に最初から吸い付いていたかのようによく馴染み、また光の下でやっと艶めく程度の美しい存在感にわっくわく。
作られた無造作。
計算された無秩序。
そう言った類の私の嫌いなものの中に「ベージュ・肌色」が入っていたものですが、視界にベージュが入ったバッグ売り場は少なくともその前より輝かしく、ベージュを身に纏った様々な肌色の人々は麗しい。
そう思うようになりました。
矢野沙織
